Director's Dental Blog
公益社団法人 日本口腔外科学会 認定医
非営利活動法人 日本顎咬合学会 会員
公益社団法人 日本口腔インプラント学会 会員
ILSC即時荷重研究会 理事
千葉県船橋市 森谷歯科クリニック 院長
歯科医師 丸林浩太郎
こんにちは。千葉県船橋市の歯医者、森谷歯科クリニックの院長丸林浩太郎です。
前回は「黒いむし歯と白いむし歯?その違いとは??」という内容のお話でした。
今回は森谷歯科クリニックに通院されている患者さまの中でお悩みの方も多い「歯ぎしり、食いしばり」についてお話していこうと思います。
歯ぎしり、食いしばりはブラキシズムといって口腔悪習癖の一つです。
みなさん歯ぎしりと食いしばりの違いはご存じですか?
歯ぎしりは寝ている間に歯をすり合わせてギリギリと音が鳴っているものです。
いっぽう、食いしばりは無意識のうちに歯をぎゅっと噛みしめているものを指します。
歯ぎしりは寝ているときに無意識にしてしまっているものですが、食いしばりは寝ている時だけではなく、日中目が覚めている時でも無意識のうちにしてしまっている場合があります。
食いしばりは特にテレビを見ている時や、パソコンなどで仕事をしている時、勉強をしている時など、何かに集中している時に無意識にやっていることが多いです。
歯ぎしりと食いしばりは上記のような違いがありますが、歯や顎に異常に強い力がかかっていることは両者に共通していることです。
ところでみなさん、そもそも人間の噛む力っってどれぐらいかご存じですか?
噛む力が強い動物といえばワニやライオンなどが思い浮かぶのではないでしょうか?
ワニやライオン、その他の動物と比べ、人間の噛む力はどれほどなのでしょうか?
噛む力は正確にはkg重やN(ニュートン)といった単位で表すのが正しいのですが、ここではイメージしやすいようにkgで表してみたいと思います。
ワニ・・・540kg
ライオン・・・310kg
シェパード・・・200kg
チワワ・・・120kg
人間(通常時)・・・70kg
人間(歯ぎしり)・・・290kg
さすがにワニやライオンには遠く及びませんが、実は寝ている間の人間の歯ぎしりはkgもの力がかかっているんですね。
人間の通常時の噛む力を考えると、歯ぎしりをしている時にはいかに歯や顎に大きな負担がかかっているかがわかりますね。
人間もさすがにワニにはかないませんが、本気を出せばライオンにも負けない力を発揮できる可能性があるのかも?しれません笑
朝起きたときに顎にだるさを感じたり、こめかみのあたりに痛みを感じたりする場合は寝ている間に歯ぎしりをしていることが疑われます。
★ポイント!
・歯ぎしりは寝ている時に無意識にやっている
・起きている時とは比べ物にならないぐらい強い力が歯や顎にかかっている
・食いしばりは何かに集中している時に無意識にやっている
・朝起きたときに顎のだるさや、こめかみに痛みがある場合は歯ぎしりをしていることが疑われる
続いて、歯ぎしりや食いしばりをしているとどのような症状が出るのかをお話していきます。
前述のように、歯ぎしりや食いしばりは歯や顎の骨、筋肉に異常な力が働きます。
そのため、いろいろなところに影響が出てきます。
歯ぎしりや食いしばりによる症状や所見は以下の通りです。
・起床時に顎のだるさや、こめかみの痛みを感じる
・咬筋(頬の筋肉)や顎角(いわゆるエラの部分)が発達し顎が張った顔貌になる
・口の開きづらさを感じる
・歯がすり減って、平らになる
・頬の粘膜が上下の歯の間に入り込むため、粘膜に白い線(噛みしめた跡)ができる
・下顎の骨の内側(多くは小臼歯部)や上顎の中央部(口蓋)の骨が隆起する
・歯茎が退縮し歯の根の部分が露出する
・歯の根元の部分のエナメル質が剥離し、クサビ状欠損(歯がえぐれたようなくぼみ)ができる
・クサビ状欠損ができることにより歯がしみる(知覚過敏症状)
歯ぎしりや食いしばりの原因は何でしょうか?
歯ぎしりや食いしばりの原因は多因子性であり、ストレスや性格、飲酒、薬物、特定の疾患などの関与が報告されていますが、詳しくはわかっていません。
その他に自律神経が関係しているとも言われています。
自律神経は交感神経と副交感神経の2種類があり、文字通り自立して働くため、私たちの意識で働きをコントロールすることはできません。
例えば血圧をコントロールしたり、体温を上下させたり、心拍数を上げたり下げたりする働きがあります。
また内臓の働きをコントロールしているのも自律神経です。
そう考えると、私たちのからだは自律神経によってコントロールされている部分が非常に多いことに気づかされますね。
基本的に興奮状態のときは交感神経が優位で、寝ているときなどリラックスしているときは副交感神経が優位になっています。
交感神経が優位な時に歯ぎしりをして、歯ぎしりをすると副交感神経が優位になりリラックスするともいわれています。
また、歯並びやかみ合わせが悪いことが原因で歯ぎしりや食いしばりが起こることはほとんどありません。
詳しい原因がわかっていない歯ぎしりや食いしばりですが、自分でできる対策がないわけではありません。
歯ぎしり食いしばりへの対策
・上下歯牙接触癖(Tooth Contacting Habit:TCH)の患者さん自身による自覚、認識
・自己暗示療法
・質の高い睡眠への改善
・フェイシャルマッサージ
・姿勢改善、舌の位置の改善、あいうべ体操
とくにTCHの認識と自己暗示療法は重要といわれています。
TCHについてですが、通常1日のうち私たちの歯と歯が接触する時間は、会話や食事で歯と歯が接触する時間も含めて15~20分程度が正常といわれています。
しかしTCHがある方は長時間歯と歯が接触しているため、歯や顎に過剰な負担がかかってしまいます。
自己暗示療法も非常に重要です。
自己暗示というと非常にオカルトっぽく聞こえてしまいますが、実は多くの方が実際に経験していることもあります。
例えば毎朝6時30分に起きている人が、次の日はどうしても5時起きなければならないということがあったとします。
いつもは6時30分に目覚ましをセットしているところ、5時に目覚ましをセットします。
そして寝る前に、「明日は絶対に5時に起きなければいけない!寝坊は絶対に許されない!」と何度も自分に言い聞かせながら眠りにつきます。
するとどうでしょう?5時に目覚ましが鳴って目を覚ますはずだったのに、4時58分に目が覚めてしまったではありませんか!
といった経験はありませんか?
まさに自己暗示にかかっていますよね。
歯ぎしり、くいしばりをしている方は、寝る前に、
「唇は閉じて、上下の歯は離す!」
と20回自分に言い聞かせて寝るようにしてみましょう。
自己暗示療法は非常に簡単ですしお金も時間もかかりません。
ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか?
歯ぎしりや食いしばりでお悩みの方は結構多くいらっしゃるのではないでしょうか?
歯ぎしりや食いしばりはそれ自体に気づいていないという方も多くいらっしゃいます。
とくに歯や顎に大きな負担がかかり、痛みや顎関節症状が現れることも多くあります。
新型コロナの影響で仕事やプライベートにも大きな影響が及ぼされ、ストレスが溜まっているということもあると思います。
また、スマートフォンの普及により、寝る前に眠くなるまでスマートフォンを見ている方もいるかもしれません。
とくにスマートフォンを見ている間は脳が興奮状態となり、交感神経優位の状態となりますので、その状態のまま眠りにつくと、寝ている間の歯ぎしりや食いしばりにつながってしまう可能性もあると思います。
まずは自分自身で歯ぎしりや食いしばりがないかを意識してみることが大切ですね。
今回は歯ぎしり、食いしばりについてその原因や症状、対策についてお話ししました。
船橋駅近くの歯医者、森谷歯科クリニックでも歯ぎしり、食いしばりに伴う症状への相談や対策、治療を行っています。
お悩みの方はいつでもお気軽にご相談ください。
それでは!
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