Director's Dental Blog
公益社団法人 日本口腔外科学会認定医
公益社団法人 口腔インプラント学会 会員
特定非営利活動法人 日本顎咬合学会 会員
ILSC即時荷重研究会 理事
千葉県船橋市 森谷歯科クリニック院長
歯科医師 丸林浩太郎
こんにちは!千葉県船橋市の歯医者、森谷歯科クリニックの院長丸林浩太郎です。
前回は「歯医者さんでの歯みがき指導の重要性」についてのお話でした。
なぜ歯みがきの仕方がそんなに大事なのか?気になる方はチェックしてみてくださいね。
≪関連情報≫前回のブログ「歯医者さんでの歯みがき指導ってそんなに大事なの?」はこちら
今回は歯の治療で多く使われる麻酔についての内容です。
麻酔が効きやすい人と効きにくい人に違いがあるのでしょうか?
歯の治療においてよく使われる麻酔。使う麻酔薬は同じでも、麻酔を打つ部位や方法によって効きやすさが異なります。
麻酔薬にもいくつか種類がありますが、麻酔の効果に大きな差はありません。
つまりどの麻酔薬を使っても、痛みを遮断するという根本の役割は変わらないということです。
しかし、実際に治療時に麻酔をしても少量の麻酔でしっかり効く場合と、これでもかというほど麻酔をうっても効きが悪い場合とがあるのは事実です。
何に差があるのでしょうか?
≪関連情報≫「むし歯になりやすい人となりにくい人、その違いとは?」
むし歯の治療を行う際に単に麻酔をするといっても、実は歯医者さんは針を刺す部位を微妙に変えているのです。
歯ぐきに麻酔の針を刺すということには概ね変わりはないんですが、歯ぐきのどこに針を刺すのかということです。
細かく歯ぐきのここら辺にうつとか、そこにうった後ここにうつなどといった話をここでしても仕方ないのでそのあたりの内容は省略します。
しかし、初めから短時間でしっかり効かせようとするとそれなりに麻酔自体が痛いということも否めません。
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麻酔が効きやすい、効きにくいの違いは治療をする部位によって差があります。
つまり、上の歯なのか下の歯なのか、前歯なのか奥歯なのかということです。
下の歯より上の歯のほうが麻酔が効きやすく、奥歯より前歯のほうが麻酔が効きやすいのです。
麻酔の効きやすい順番は以下の通りです。
上の前歯、上の奥歯、下の前歯、下の奥歯
よく「下の親知らずを抜歯したときに麻酔が効きにくかった」という話を聞きますが、下の親知らずは下の一番奥の歯なので、歯の中で一番麻酔が効きにくい部位だからなのです。
≪関連情報≫森谷歯科クリニックでは横を向いた親知らずの抜歯も行っています
歯医者さんで使う麻酔は浸潤麻酔といって、麻酔薬が歯ぐきや顎の骨に浸み込んで効果を発揮します。
骨は2層になっていて、表面は緻密で硬い皮質骨、中のほうはすう疎な海綿骨でできています。
当然硬い皮質骨は麻酔薬が浸透しにくいため、この皮質骨が厚い場合、麻酔の効果が出にくいと言えます。
先ほどの上の歯より下の歯のほうが麻酔が効きにくいというのは、下あごの骨のほうが上顎の骨より皮質骨が厚く、骨の密度も下あごの骨のほうが高い傾向にあるというのがその理由です。
歯の神経は顎の骨の中を通り、歯の根っこの先から入り込んでいます。
そして歯は顎の骨の中に埋まっていますので、骨の外から麻酔を効かせようと思うと、骨が厚いほど、緻密であるほど麻酔が効きにくいということです。
麻酔を使うタイミングは症状が強くて麻酔をしないと治療ができない場合と、抜歯のように今は症状は強くないけど治療の際に強い痛みを伴う場合とがあります。
痛みがあるときは強い炎症を伴っている場合で、痛みがないときは炎症は弱い場合ですが、これらによっても麻酔の効きやすさに差が出てきます。
組織が炎症を起こしているとき、組織は酸性に傾いています。
麻酔薬はアルカリ性で、炎症を起こしている酸性の組織に麻酔薬を作用させても、それが中和されてしまい効果が薄れてしまうのです。
炎症が強いほど酸性に傾いていて、麻酔が効きにくくなってしまうのです。
「下の親知らずが痛くなったので抜歯してほしい」という患者さまも多くいらっしゃいますが、下の奥歯で炎症が強い場合は最も麻酔が効きにくい状況なので、その日に抜歯することはやめましょうと言うことが多くあります。
その場合は抗生物質や消炎鎮痛剤、うがい薬などを処方して炎症が収まってから抜歯を行います。
下の奥歯がむし歯でズキズキ痛いといった場合も同様で、麻酔が非常に効きにくいことがあります。
麻酔の効きやすい、効きにくいというのはいろいろな要因があるんですね。
骨の厚みや質は人によって差がありますので、それを考えると麻酔が効きやすい人と効きにくい人がいるということが理解していただけたと思います。
しかし、同じ人でも麻酔をする部位や炎症の度合いによって麻酔が効きやすい場合と効きにくい場合があるということもわかっていただけたと思います。
今後もし歯医者さんで麻酔が必要な治療を行う場合は、今回の内容を頭に入れて治療に臨んでいただけたら心の準備ができるかもしれませんね。
それでは。
公益社団法人 日本口腔外科学会認定医
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